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中国人留学生の学費に頼るのは「危険」 英当局が大学に警告

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英イングランドの高等教育規制機関・学生局(OfS)は、同国の大学が中国人留学生からの学費収入に過度に頼っていることから、財務の安定が危険にさらされる恐れがあると警告した。

中国人は英大学に通う留学生の中で最大の割合を占めているが、英中両国の間ではここ数カ月間、緊張が高まっている。このためOfSは、留学生が突然途絶え、それに伴って学費収入が減少し、一部の大学の将来が危ぶまれる可能性があると指摘。中国人留学生を多く抱える国内の23の大学に対し、突然の収入減に備えた緊急時対応策を検討するよう要請した。

OfSのスーザン・ラプワース最高経営責任者(CEO)は「留学生はイングランドの高等教育に多大な経済的、文化的、教育的利益をもたらしている」としながらも、「一部の大学が留学生からの学費収入に過度に依存しており、ある一国からの留学生が財務モデルの重要な部分を占めている場合があることに懸念を抱き続けている」と表明。「大学側は、留学生の受け入れが予想を下回った場合にどうするのかを知っておく必要がある」として、複数の大学に対し、こうしたリスクに注意を払い、収入が突然減少した場合に大学を守るための緊急時対応策を準備するよう、文書で要請したことを明らかにした。

英国の大学には約15万人の中国人留学生が在籍。英国と欧州連合(EU)以外の地域出身の学生の4分の1以上を占めており、大学側にとっては学費収入の大きな柱となっている。例えば、中国からの留学生が最も多い大学の1つである英マンチェスター大学では、留学生全体の約半分を中国人留学生が占めている。同大学の学費収入の55%は海外からの留学生によって賄われており、大学の総収入の半分を占めている。


だが、近年は中国からの留学生を受け入れる際の代償、特に政治的干渉のリスクや学問の自由が損なわれることへの懸念が高まりつつある。英庶民院(下院)の報告書は、中国が大学の講義の内容や誰を講演者に招くかといったことに影響を与えることで、英国の学問の自由を損なおうとしていると警告している。

マンチェスターでは昨年、中国総領事館前の民主派デモに参加していた中国人男性が同館の敷地内に引きずり込まれ殴打される事件が起き、英中の緊張は一層高まった。香港の人権問題や台湾の安全保障問題、新疆ウイグル自治区のウイグル族に対する大量虐殺の告発により、貿易の不均衡やサプライチェーン(供給網)の脆弱(ぜいじゃく)性への懸念が高まる中、英政府は近年、対中関係でより強固な姿勢を示している。リズ・トラス前首相は先週、台湾を訪問した際、中国の脅威に対抗するための「経済的な北大西洋条約機構(NATO)」を呼び掛け、中国政府の怒りを買った。

大学側にとっては、2国間関係の悪化により、中国が英国に送る留学生数を大幅に減らすことが懸念される。これはOfSの報告書でも、次のように強調されている。「留学生の受け入れに過度に依存することは、各種大学にとって重大なリスクであり、留学生から支払われる学費の急激な減少や中止は、持続可能性に関する懸念を引き起こす可能性がある。こうした中止は、例えば地政学的環境の変化などから生じることがあり、その場合、(大学の)収入に即時かつ重大な影響を与える可能性がある」

これに対し、140の大学の統括団体である英大学協会は、限られた資金源に頼ることの危険性を認識しており、学生層の多様化に取り組んでいると説明した。

中国人が英国の大学内の留学生の間で占める割合が最大であることに変わりはないものの、近年増加が最も著しいのはインドからの留学生で、過去10年間で約1万5000人から9万人近くにまで増加している。

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