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党内造反で「李在明」逮捕同意案が可決、身内から見限られた反日政治家の落日

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補選出馬も党代表就任もハンストも全ては逮捕逃れのため、見透かされた底意

9月19日、入院した李在明氏を見舞う文在寅・前大統領(Yonhap News Agency/共同通信イメージズ)

(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 韓国国会は9月21日、検察から提出されていた最大野党「共に民主党」代表・李在明氏に対する逮捕同意案を採決し、賛成149、反対136、棄権6、無効4で可決した。逮捕状請求の理由は、北朝鮮に対する不正送金に関与した疑いや「柏峴洞(ペクヒョンドン)開発事業特恵疑惑」によるもの。

 可決に必要な出席議員の過半数は148である。つまり政府・与党・検察にとってはわずか1票差での勝利となった。投票に参加した民主党議員は167名。つまり民主党の中から30名ほどの造反者が出たことを意味する。朝鮮日報は与党や与党に近い政党・無所属議員が賛成票を投じたとすれば少なくとも「野党29人が反乱」したと見られる、と報じている。

李在明氏逮捕に向け大きな前進

 国会での同意案可決を受け、今後逮捕状発布の是非を判断する裁判所の令状審査が実施される。

 実は裁判所の逮捕状審査は発布が認められないケースも2割近くあり、事態の推移は未だ不透明な部分はある。しかし、朝鮮日報が指摘するように、李在明氏はこれまで、疑惑について「関係していない」「知らない」との説明に終始しているが、それが事実でないことも関係者の証言から判明している。

 裁判所の令状審査においては、逃亡や証拠隠滅の可能性の有無などが検討される。

 韓東勲(ハン・ドンフン)法務部長官は、国会で逮捕の必要性について「多数の関係者が組織的に関与しており、共犯者に対する懐柔や圧迫を通じた証拠隠滅の懸念が非常に大きい」と説明した。実際、李在明氏にはこれまで自身の事件への関与を隠蔽しようとしてきた経緯があり、李在明氏にとって有利な状況とはいえない。

 そう考えれば検察は、「李在明氏逮捕」に向け最大の関門を突破したことになる。

李在明氏の逮捕同意案が可決されたことで、民主党内ではこれに賛成票を投じた犯人探しが始まるだろう。国会での採決前に、民主党の事務総長は「可決票を投じる議員を徹底追跡し、探し出して政治的生命を絶つ」と党所属議員を脅迫していたからだ。

 文在寅政権の時は、民主党が強力に政権を擁護したため、文在寅政権で起こったスキャンダルは致命傷にまでは至らず、そのおがけで高い支持率を誇ってきた。しかし、今回の党代表逮捕同意案の採決で多くの離反票が発生した背景には、民主党の不逮捕特権乱用に対する国民の批判を意識する議員が増えていることがあったに違いない。その危機感が反対票投票という形で表れたのである。

民主党から反日を主導する人はいなくなった

 もしも李在明氏が実際に逮捕されるような事態になれば、日本にも大きな「影響」が出ることになるだろう。すなわち、民主党の「反日路線」が終焉を迎える可能性が高いということだ。

 民主党関係では、挺身隊問題対策協議会元理事で国会議員(現在は無所属)の尹美香被告も9月20日の控訴審判決において当時の横領などの罪で懲役1年半・執行猶予3年の判決を受けた。尹被告は最高裁に上告するようだが、そこで有罪が確定すれば、議員を失職することになる。このように以前のように民主党内や民主党に近い立場で反日活動をする主要人物が議席を失いかけているのだ。

 そうした影響もあるのか、最近の韓国の「反日扇動」には、国民もついてこなくなっている。

いま民主党が進めている福島第一原発処理水放出に対する反対運動は、李在明代表が主導してきたが、それでも前回の反対集会への一般市民の参加は2000人程度に減少している。李在明氏逮捕となれば、さらに勢いを失う可能性がある。

 処理水放出への反対は、李在明氏に圧力をかける尹錫悦政権への反発として続くことは考えられるが、それは反政府闘争であって、反日という意味は薄れてくるのではないか。今後、民主党の反日活動がさらに勢いを失う事態は避けられないだろう。

不逮捕特権放棄の公約を事実上否定

その李在明代表は、そもそも国会議員が持つ「不逮捕特権」の放棄を公言していた。ところが李在明氏は、国会での採決の前日となる20日、病院のベッドの上からFacebookに「検察独裁の暴走機関車を止めてください」と書き込み、「明白に違法不当な今回の逮捕同意案の可決は政治検察の工作捜査に翼をつけるもの」と批判、事実上、自分から宣言していた「不逮捕特権放棄」をあっさり翻した。

 こうした経緯があったため、与党「国民の力」は、李在明代表がハンストを開始したのは、逮捕を逃れるためであったと見ており、李在明氏の反発は意に介していない。ハンストからの一連の動きは、断食闘争で体力の限界まで自らを追い込むことで、党内の結束を高め、反対票を増やそうとしていた李在明氏の戦術と見ており、あくまでも李在明氏逮捕を諦めない構えである。

 李在明代表は現在、「入院中」の身だ。福島第一原発の処理水放出に反対してハンガーストライキを決行中だったが、ハンスト19日目となる9月18日、体調不良を訴え、救急車で病院に搬送されたからだ。逮捕逃れが主眼だった?李在明氏の政治活動

 朝鮮日報、中央日報や聯合ニュースは、李在明氏が採決の前日、逮捕同意案を否決するよう訴えたことが、李在明氏の「公約放棄」として受け止められ、かえって逆効果になったのではないかと分析している。

 振り返ってみれば、李在明氏のこれまでの行動は、「不逮捕特権放棄」を公言しながらも、実は全て「逮捕逃れ」のための行動だったとも捉えられる。国民もそれを感じ始めている。そこに今回の「否決の訴え」がなされたことで、「やはりそうか」との反応が、世論、そして民主党所属の議員にも巻き起こったのだろう。

 李在明氏は、大統領選挙敗北後、一貫して自らを逮捕から防衛することを主眼として政治活動を行ってきたと言っていい。

 李代表は大統領選敗北の3カ月後、異例なことだが国会議員の補欠選挙に名乗りを上げて当選。まずは議員の不逮捕特権を確保した。

 さらに議員になって2カ月後には最大野党の党代表選に勝利。国会での多数党を掌握するとともに、過去1年間1日も欠かさず防弾国会(李氏逮捕を防ぐための会期続行)を開き続けた。

 また民主党としても、党代表が起訴されても党代表職を維持し、一、二審で有罪判決を受けても総選挙に出馬できるよう党規約を改正した。

 これらの一連の行動は、全て逮捕を免れるためのものと理解され始めている。自らの保身のために国政選挙や党代表選を利用したと批判されても仕方がないだろう。

部下が逮捕され自殺しても自身は保身に終始

 李在明氏の疑惑に関連しては側近から多くの逮捕者が出ており、またすでに5人も自殺しているのだが、李在明氏自身は一貫して関与を否定している。

 今回の逮捕容疑の一つである韓国の下着メーカーサンバンウルグループが肩代わりして北朝鮮に不正送金した疑惑のうち、300万ドル(約4億4000万円)は李在明氏が京畿道知事の時の訪朝費用であり、検察はこの疑惑について集中的に追及している。

 李在明氏が9日に提出した書面陳述書では、訪朝推進に関する質問には、「私は知らないことであり、李華泳(副知事)が全てしたこと」と回答し、部下に責任を押し付けている。だが、李副知事は裁判の過程で「対北朝鮮送金に関する内容を李在明氏に報告した」と検察に供述したことが明らかになっている。

 ここからもわが身の保身を第一と考えている姿が浮かんでくる。

 民主党内に、このような李在明氏に従おうとしない人が出てくるのは当然である。非李在明系の人々にとって民主党が李在明氏と心中すべきではないとする意志が働いても不思議はない。

 そのため民主党はいま分裂の危機にある。聯合ニュースは、「民主党は党代表が逮捕される可能性に直面すると同時に派閥間の対立がさらに深まり、分裂も懸念される状況に置かれることになった。李氏の支持層の反発も加わり、党内外の激しい混乱はさけられないと見られる」と分析している。

 今回の逮捕同意案の可決で李代表の統率力は大きく弱まった。李氏が「不逮捕特権は放棄する」という公約に背いたこと、ハンストは逮捕を免れるためのものだったという批判の高まりで支持層の離反が予想される。

さらに聯合通信は、「李氏の逮捕状が実際に発布された場合、民主党は代表不在の中で現在の指導体制を維持しようという『親李在明派』とリーダー交代を求める『非李在明派』の対立が激化しよう」と伝えている。

 本来、李在明氏は逮捕されれば、代表職を退くのが筋であるが、かたくなに逮捕を拒んできた李在明氏には辞職の意志はないだろう。むしろ保身という観点から代表職に固執する可能性が高い。

反日は李在明アジェンダ、同氏の不在は反日の後退に直結

 李在明氏の影響力が大きかった時には一般市民を巻き込んだ反日運動は活発であった。しかし、李在明氏の影響力が減退してからは、反日活動に参加する一般の市民は激減し、活動家中心の運動に変貌した。

 李在明氏は、慰安婦や徴用工などの歴史問題で対日非難を繰り返してきた。しかし、尹錫悦政権になり、国民は対日関係改善への本心を隠さなくなった。このため対日批判の矛先を福島第一原発処理水の放出に切り替えた。場外集会は李在明氏が主導して進められた。

 参加者の数は、最初の放出時の8月24日こそ7000人ほど(注:韓国で大規模集会と言われるのは少なくとも10万人規模)であったが、その後は徐々に減り、2週間後の前回は約2000人となった。

 しかも直近の参加者激減は李在明氏が断食闘争を展開、国民の支持を強く求めている中である。自身の関与が取りざたされる疑惑に関して部下が逮捕され、自殺者まで出ている中でも、自分の身だけは守ろうとする李在明氏に人望はなく、李在明氏の影響力が大きく低下するのは当然である。

反日活動をする余裕もなくなった民主党

 反日活動を主導してきた李在明氏に対する国民の信頼ももはや失われたと言っていい。文在寅政権時代には、日本を擁護すると「親日だ」と批判されたが、尹錫悦政権が日韓関係改善を打ち出すと、国民は安心して日本に対する好意を語るようになった。もはや、親日をタブーとする必要はない。逆に政治家が反日活動をしても支持にはつながらなくなるだろう。

 今の民主党で反日活動を主導しようとする有力者は出てこないだろう。福島原発処理水放出反対を日本で叫ぶ議員はいるが、李在明氏がいなくなった後、彼らの声に耳を傾ける人はいるだろうか。

 深刻な混乱に陥った民主党は、緊急非公開最高委員会と緊急議員総会を相次いで開催した。イ・ソヨン院内報道官は「予想できなかった結果なので非常に衝撃的」「指導部が議員たちに数回否決を訴えたが、違う結果が出て残念だ」と明らかにした。

なお、李在明代表は同夜遅くになっても反応を示さなかった。

 今の民主党にとって、分裂の危機を回避し、党勢の回復を図るため、尹錫悦政権の強引な野党締め付け策に抵抗する姿勢を見せることになるだろう。それでもいったん地に落ちた国民の信頼を取り戻すことは容易ではない。

 政府与党の、民主党の不正追及は一層強まるだろう。今の民主党はそれをいかに防ぐかに集中せざるを得ない状況である。

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