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処理水放出で中国から「電凸」攻撃、SNSの人気アカがデマを拡散し反日を扇動

中国各地で抗日戦争行事 中国国営メディアが記念行事報じる

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不買運動、店舗破壊・・・習近平政権がガス抜き目的で嫌がらせを放置

  • 処理水の海洋放出に対する中国の嫌がらせが激しさを増している。日本製品の不買運動や日本料理店の破壊など愛国心を証明するパフォーマンスが広がっている。
  • 特に、組織的に迷惑電話をかける「電凸」攻撃はかつてない現象で、背後に当局に忖度するデマを拡散する「自媒体」と呼ばれるSNSの人気アカウントの影響力増大がある。
  • 9月は「反ファシスト抗日戦争勝利記念日」(3日)や「国恥日」(18日)など反日機運を刺激しかねないイベントがあり、嫌がらせのエスカレートが懸念される。

(福島香織:ジャーナリスト)

 日本が8月24日、福島第1原子力発電所の多核種除去設備(ALPS)処理水を海洋放出したことに対し、中国は激しく抗議し、即日、日本の水産品を加工品も含めて全面禁輸する措置をとった1。それだけでなく、一種の「反日キャンペーン」のような形で、官製メディアが一斉に日本を「核廃水」問題でたたき始めた。それを合図に人民の「日貨排斥運動」(日本製品の不買運動)や日本の福島関連の飲食店や企業や公共施設に「電凸」(組織的な抗議電話)を始めた。さらには日本大使館や日本人学校への投石、嫌がらせ、日本料理店経営の中国人が愛国を証明するために自分の店を破壊するようなパフォーマンスなどが全国で起きている。

 9月は中国にとって「反ファシスト抗日戦争勝利記念日」(3日)や「国恥日」(18日、満州事変勃発日)などがあり、こうした過剰反応がどこまでエスカレートするかは不明だ。日本政府は29日、中国側は禁輸措置に対して世界貿易機関(WTO)に提訴する、としている。だが、問題の本質は経済問題ではないので、中国側のこうしたアクションに歯止めをかける効果にも限界があろう。

 では問題の本質はどこにあるのか。中国と中国人はなぜここまで「核廃水」に過剰反応するのか。

米国人が一人でも拉致されると米国はすかさず対抗措置を取り、相手を外交交渉に誘い出して被害者を取り戻す。

 民間団体の調査によると800人近くが拉致されている可能性のある日本ではわずかに5人しか取り戻していない。

 無辜の国民が国家主権を侵害されて連れ去られたのを取り返せない不甲斐なさ、外務省と同省を統括する外相(さらには首相)は、当初の問題処理を誤ったのではないかと詰問したい。

 ここでは拉致問題は扱わないが、いまだに解決しないことから得られた教訓だけは生かさなければ、誤りを繰り返し国益を毀損し続けるだけである。

拉致問題で得られた教訓は何か?

 それは遺憾の意を示すことや飴玉を与えながらの交渉では、国民の意向を考慮する必要がない全体主義の国に対しては問題解決にはつながり難いということだ。

 政治問題や経済問題で理不尽かつ不利益をもたらす言動を相手が行なっても、日本(政府)は馬鹿の一つ覚えのように「遺憾である」と繰り返すだけなので、「遺憾砲」と揶揄さえされている。

 米国や英国などG7に属する国は言うまでもなく、日本よりもはるかに小さな国力しかないとされる国でも、中国が理不尽な、あるいは国益に反すると見られる制裁などを行った時には、非難の声明を出すとともに同等か同等プラスαくらいの対抗措置をとって対処することがしばしばである。

 例えばある人物がスパイとして拘束された時には、まず非難するが、前後して類似した業務に従事する人物を拘束する。

 相手が何かを理由に総領事館を閉鎖したときは、こちらも相手により打撃を与える総領事館を閉鎖するなどする。

 数百万人しかいない国でも中国漁船に拿捕された人物や船を取り返すために、中国の他の船を撃沈さえする。

 国家とは領土、国民、主権(の擁護者)とされ、国の大小とは関係ない。どのような国も国益や主権の侵害に対しては必死で最大限の努力をしている。

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