
東京電力福島第1原発の処理水放出をめぐり、中国が尋常ではない「反日」暴挙を展開している。
報道によると、山東省青島の日本人学校では、中国人が敷地内に石を投げ込み、公安当局に拘束された。江蘇省蘇州の日本人学校には複数の卵が投げ込まれた。中国のインターネット上では日本製品の不買運動を扇動する動画が投稿されている。福島県内の飲食店や市役所には、中国発信とみられる番号から抗議電話が相次いでいるという。
2012年にも、沖縄県・尖閣諸島の国有化をきっかけに、中国の100以上の都市で「反日」デモが発生し、数十万人が参加した。中国各地の日系スーパーの売り場が破壊され、略奪行為が発生した。日系企業の工場が破壊され、日本の自動車会社の販売店も襲撃を受けた。
今回、大きな暴動にならないことを願うが、投石は当たり所が悪ければ命にかかわる。罪のない子供が通う学校を標的にするのは卑怯(ひきょう)であり、絶対に許されない。
一連の行為に、中国当局が関与したかは分からない。
ただ、自国の原子力施設から、福島第1原発の数倍もの放射性物質トリチウムを放出しておきながら、日本だけを「核汚染水」などと攻撃するのはおかしい。従来の「反日」教育の影響もあるのではないか。中国では現在、不動産危機が巨大な金融危機に発展しつつある。失業率増加など国内の経済状況は悪化している。習近平総書記(国家主席)率いる共産党政権への批判を、「反日」に転嫁しているとの見方も根強い。
中国政府が放置すれば、燃え盛った「反日」感情が、いつの間にか「反共産党政権デモ」に発展することになりかねない。中国政府としても、放置しておくメリットはないと思う。
日本政府は「邦人の安全確保」を中国政府に求め、在留邦人には注意・警戒を呼び掛けているという。世界保健機関(WHO)や、国際原子力機関(IAEA)による処理水放出への評価を踏まえて、中国政府による日本産水産物輸入停止についても、即時撤回を求めていくべきだ。理不尽な脅しに屈してはならない。
日本企業も「中国リスク」について再認識すべきだ。
「反日」デモは前出の12年だけでなく、何度も繰り返されている。中国は、理不尽な主張や理屈を根拠に危険な行動を起こす国といえる。国防動員法や国家安全法など、国策に人民を巻き込む法整備も進められており、有事の際は、さらに過激になるだろう。社員や家族の安全を守れるのか。中国でのビジネスは「危険と隣り合わせ」ということだ。
最近、「脱中国」がさかんに叫ばれ始めている。これを機に、企業経営者は具体的に行動に移す時期ではないか。
■ケント・ギルバート 米カリフォルニア州弁護士、タレント。1952年、米アイダホ州生まれ。71年に初来日。著書に『強い日本が平和をもたらす 日米同盟の真実』(ワニブックス)、『いまそこにある中国の日本侵食』(ワック)、『わが国に迫る地政学的危機 憲法を今すぐ改正せよ』(ビジネス社)など。