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「帝国の慰安婦」朴裕河氏、安堵の表情「正しい判決が出た」…仏像判決には韓国仏教界から反発も 

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読売新聞 ソウル=小池和樹

韓国大法院(最高裁)で26日、日本に関連する2件の判決が出た。いずれも1審や2審で日本に厳しい韓国世論に迎合するような判決が下されたが、大法院はこの日、冷静な判断を示した。「正しい判決が出た。長い間、私の意図を正確に把握し、支持してくれた人が多かったことを誇りに思う」

 慰安婦問題を検証した学術書「帝国の慰安婦」を巡る上告審で控訴審の有罪判決が破棄されたことを受け、著者の朴裕河(パクユハ)氏は安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 この裁判では、1審は検察が主張する名誉毀損(きそん)は成立しないと判断したが、ソウル高裁は2017年10月、1996年に国連人権委員会で採択され、慰安婦を旧日本軍に強制連行された「性奴隷」と明記した「クマラスワミ報告」などを根拠に著作の中の表現を「虚偽」とし、逆転有罪判決を言い渡した。

 ソウル高裁の判決から6年ぶりの司法判断を示した大法院は「無罪の趣旨」と踏み込んだ表現で高裁判決を破棄した。

 長崎県対馬市の観音寺から盗まれた仏像を巡る訴訟では、大法院は所有権が観音寺にあると認め、仏像は盗難から11年を経て、返還の道筋が開けた。韓国メディアによると、韓国の仏教界では判決への反発もあるが、日韓関係改善を進める尹錫悦(ユンソンニョル)政権は、仏像の早期返還に向けた手続きに入る見通しだ。

批判のタブー視 崩れた…静岡県立大・奥薗秀樹教授(現代韓国政治外交)

韓国の裁判所は、政権の意向や国民情緒を踏まえて判断する傾向がある。「帝国の慰安婦」裁判と盗難仏像の訴訟で、2017年に日本側に厳しい判断が出た際も国内情勢が少なからず影響した可能性がある。当時、保守の朴槿恵(パククネ)大統領が弾劾(だんがい)訴追で罷免(ひめん)され、左派の文在寅(ムンジェイン)政権が国民的な熱狂の中で誕生した。文政権は親日や保守を既得権層として攻撃し、「積弊」を清算すると訴えた。

 今回の2件の大法院判決は日本から見れば冷静な内容だ。だが、時の権力や世情によって司法も揺れるという韓国の特徴は今後も変わらないだろう。保守と左派の政治対立が激しく、司法府の内部でも同様の対立がある。

 「帝国の慰安婦」裁判では、慰安婦問題を巡る韓国社会の変化も影響したのではないか。かつては元慰安婦の支援団体が巨大な力を持ち、批判はタブー視された。だが支援団体のトップが補助金の不正流用事件で有罪判決を受けるなどし、ここ数年で聖域が崩れた。

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