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“確認が得られていない”軍艦島の映像をタレ流して反日をあおったNHKの罪 元島民は「謝罪を求めたが、上層部が了解しない様子だった」

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長崎・端島(はしま)炭坑(軍艦島)を巡ってNHKが放映した記録映画「緑なき島」は、朝鮮半島出身者の強制労働の証拠として韓国で反日運動に利用されてきた。昨年末、映像の一部が「端島炭坑内の映像であるという確認が得られていない」とNHKが元島民側に認めたと報じられ、稲葉延雄会長は「ひと区切り」と語るが……。

大みそかの産経新聞1面に、〈NHK 軍艦島と確認できず 炭坑番組映像 調停で認める〉

 との見出しが躍った。炭鉱で栄えた長崎・端島(軍艦島)は、2015年に「明治日本の産業革命遺産」として世界文化遺産に登録。一方で、NHKの映像がもとで島はおとしめられ、隣国からの誹謗にさらされてきた。それがこのたび、元島民とNHKの間で「調停」が成立したというのだが――。

韓国で映像が悪用され……

 1955年にNHKが放映した記録映画「緑なき島」では、端島炭鉱の様子が映し出されていながら、坑内の映像は明らかに別の炭鉱であった。にもかかわらず、2010年には韓国の公共放送KBSに映像を提供し、かの地で拡散。メディアのみならず、釜山の「国立日帝強制動員歴史館」でも映像が展示され、また高校の電子教科書にも“転用”。戦時中に朝鮮半島出身者が劣悪な環境の「地獄島」で強制労働させられたことの裏付けとして用いられてきた。

「この間、日本では風評被害などに苦しむ元島民が17年1月に『真実の歴史を追求する端島島民の会』を設立。20年11月にはNHKに対して『抗議書兼要求書』を送付し、事実とは異なる映像が韓国で悪用されていることに抗議し、経緯の調査を求めるとともに、元島民らへの謝罪を要求したのです」(端島の問題に詳しいジャーナリスト)

「大変遺憾に思う」と発言

 これにNHKは、「当時の端島における取材に基づき制作・放送されたもの」と回答。局による検証を経たのち、21年12月にも「端島炭坑以外のものであるとの結論には至らなかった」と、調査結果を伝えていた。

「23年4月には、NHKの稲葉会長が参院決算委員会で、映像が韓国の施設で展示されていることについて『元島民の方々が名誉を傷つけられたとお感じになっていることは大変遺憾に思う』と発言しました。ですが翌月の同委員会では、映像が著作権の保護期間を過ぎており、韓国に展示取りやめを求めるのは『法的な根拠もなく、実効性に限界があると考えている』とも述べていたのです」(前出のジャーナリスト)

 その後も「島民の会」が求めてきた稲葉会長との面会はかなわず、有志は昨年1月、東京簡裁に調停を申し立て、12月17日に成立。これを報じたのが冒頭である。

どうしても謝罪を了解しなかった上層部

 調停調書によればNHKは「作業員全員がヘッドランプを付けていない場面」「坑道内で電球を使用している場面」の映像について、現時点において、端島炭坑内で撮影されたものであるという確認が得られていないことを認めている。また島民側がNHKに道義上の謝罪を求め、NHKは強い遺憾の意を表明するとの条項も含まれている。

 元島民側の代理人である北浦一郎弁護士が言う。

「調停成立まで、相手方とは5回のやり取りがありました。相手方は当初、『あれは端島の映像です』と従来通りの姿勢でしたが、当方は早い段階で、戦前戦中戦後の大学の鉱山学部の記録やGHQの報告書などをリストで提出。『証拠固めをしていますよ』という姿勢を見せたわけですが、ここから相手方の対応が変わってきたと感じました」

 それでも、

「最ももめたのは謝罪についてです。当方は金銭など要求しておらず、『時間がかかって申し訳ない』という道義上の謝罪を求めました。相手方の代理人もその意味は理解していたのですが、上層部がどうしても了解しない様子で、『強い遺憾の意を表明』でどうか、と打診してきました。相手方には無謬(むびゅう)性というか、自分たちが世に出したものに間違いはない、といった意識を感じました」

「なぜ4年もかかったのか」

 調停申し立て人のメンバーである「島民の会」の中村陽一幹事長は、

「私もあと2カ月で87歳。『確認が得られていない』という回りくどい言い方にせよ、実質的に『端島の映像ではありませんでした』と認めたわけだから、ここで手を打ったということです。それでも、なぜ最初の抗議から4年もかかったのか不思議でなりません。NHKの放送ガイドラインには『意見、苦情などには誠意を持ってできるだけ迅速に対応する』とありますが、それが守られていませんね」

 当の稲葉会長に尋ねると、

「和解ができて、私の考えは強く『遺憾だ』と示したつもりです。ひと区切りついたという認識です」

 それでも、元島民らを支援してきた産業遺産国民会議専務理事の加藤康子氏は、

「今後、韓国で尹政権に取って代わり、“反日政権”が誕生するかもしれません。そうした時にあの映像が使われたら、NHKはどう対応するのか。注視していかなければなりません」

“遺憾”などとお茶を濁している場合ではないのだ。

「週刊新潮」2025年1月16日号 掲載

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