
「蒼井そら(43)は中国でダントツの人気を誇る日本人のセクシー女優です。’12年に当時の与党、民主党の野田佳彦政権が釣魚島(尖閣諸島の中国での名称)を国有化したとき、中国で大きな反日デモが起きました。そのとき、中国の若者たちが掲げたプラカードやネット上にあがったユニークなキャッチコピーには、思わずちょっと笑ってしまいました。『钓鱼岛是中国的、苍井空是世界(大家)的』――釣魚島は中国のもの。蒼井そらは世界(みんな)のものというのですから」
そう話すのは、“国会王子”の愛称で知られている元TBS記者・武田一顕氏(58)だ。最新の著書『日本人が知っておくべき中国のこと』は“近くて遠い”中国の政治経済から文化までが、わかりやすく解説されている。その内容を一部、紹介しよう(著書内での武田氏の発言を再編集しています)。
◆中国国民は性的に抑圧されている
中国の若い世代の間で、日本のアダルト動画はよく見られています。もちろん、当局はアダルト動画の視聴を禁じていますが、抜け道があるようで、今はインターネットのポルノサイトも見られるようです。
中国共産党はこの状況を認識はしています。でも、ある程度見て見ぬふりをしているのでしょう。ポルノを取り締まり過ぎると、国民にストレスがたまることはわかっているからです。アダルト動画は政治的でもないですし、それによる犯罪などの問題が起きない限りは騒ぎにはなりません。
蒼井そらに次いで中国の若者に人気があったセクシー女優が松島かえで(42)です。200万部を超えたベストセラー小説『上海ビート』の著者・韓寒が自分のブログに松島のブログのリンクを貼ったこともあって、人気が爆発しました。
中国には、基本的には合法的な風俗産業はありません。日本で黙認されているような、性的サービスを行うお店は、少なくとも表立ってはありません。アダルト動画もなければ、セクシー本もない。国民は性的に抑圧されています。ふだん抑えこまれているからこそ、爆発力があるのです。
◆平均年収約60万円で日本の不動産を“一棟買い”!?
少し前の中国人旅行者は、観光バスをチャーターして銀座を訪れ、高級ブランドのバッグや服を次々と買い、秋葉原では家電を大量に購入していました。いわゆる「爆買い」です。今はモノよりも体験にお金を払うように変化したようです。
日本の不動産を買う中国の富裕層が、今はとても増えています。社会主義国の中国では、土地は国が所有しています。不動産を自分のものとして購入することはできません。日本でいう定期借地権しかありません。住居であれば70年、それ以外の用途だと40年または50年間を最長とした使用権を取得し、借りることになります。
事実上の“自分の土地”なのですが、建前として国家所有なので、どこまでいっても借り物なのです。そのため、中国から物理的にも近く、さらに円安の今は、日本の不動産が買い時なのです。日本では、不動産を購入すれば、それは完全に自分のものです。農耕民族で土地に執着を持つ中国人には、大きな魅力です。
日本在住の中国系不動産会社の経営者に聞いたところ、中国の富裕層は日本のマンションを一棟買いして賃貸に出したり、民泊に登録して商売をしているそうです。
これはコロナ前に取材で聞いた話ですが――北海道のタクシー運転手が札幌から千歳空港まで乗せた中国人に「とりあえず5000万円渡すから次に来るまでに適当なマンションを買っておいてほしい」と依頼されたそうです。
見ず知らずの人に5000万円を預けるという感覚は、異常に思えてしまいますね。この運転手も怖くなり、断ったそうです。
その感覚は、多くの中国人から見ても異常と思われるでしょう。2013年から2023年まで首相を務めた李克強は、2020年に記者会見で、「中国の平均年収は3万元(約60万円)だが、平均月収が1000元(約2万円)の人が6億人もいる」と記者会見で発言しています。富裕層と貧困層。都市部と地方。中国経済の格差は日本と比較にならないほど拡大しているということです。
習近平政権をどう理解したらいいのか。中国は果たして台湾統一に動くのか。毛沢東の乱れた性生活を描いた“禁書”を中国に持ち込んだ著者の結末とはーー。『日本人が知っておくべき中国のこと』は辰巳出版より発売中。
たけだ・かずあき/’66年生まれ、東京都出身。早稲田大学第一文学部卒業、中国文学専修。元TBSラジオ国会担当記者。当時より“国会王子”の異名で知られる。また、『サンデージャポン』の政治コーナーにも長く出演し親しまれた。’23年6月、報道局ニュース編集長を最後にTBSを退社。大学在学中には香港中文大学に留学経験があり、TBS在職中も特派員として3年半北京に赴任していた経験を持つ。
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